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コミュニティビジネスとメガマンション

「コミュニティビジネス」というビジネス・ジャンルがあるのをご存じだろうか。地域に眠っている資源や人材を発掘し、地域コミュニティの活性化を目的にしたビジネスをそう呼んでいるようだ。

 たとえば、街の商店街の活性化、農産物の産直による地産地消の推進、環境リサイクルに基づくごみ処理やクリーニング、子育てや老人介護のサポート等々、その地域に根ざし、その地域コミュニティに直結するビジネスがその典型だろう。そのコミュニティビジネスの起業への関心が、いまにわかに高まっている。

 コミュニティビジネスをめざす人たちは、まずは自分が暮らす身近な地域社会に貢献することを第一優先に考え、同時に、自分が好きなこと、得意とすることをビジネスにしようとする想いが強いようだ。だから、コミュニティビジネスを手がかりに、いわゆる「脱サラ」や「女性起業家の社会進出」を実現しようという人たちが多いように見うけられる。さらに言えば、その背景には、悩める現代人の「自分探し」への思いも強くあるように思えてならない。

 実は、僕がコミュニティビジネスについて関心を持ち、その詳細を知ったのはつい最近のことで、東京都中央区主催の『コミュニティビジネス実践講座』というカルチャースクールでレクチャーをしたことが、そのきっかけだった。

 そのカルチャースクールの主催者は、僕が提唱する「コミュニティデザイン」に関心を持ったらしい。シリーズ化され数日間にわたって開講されたこのカルチャースクールで、僕は、コミュニティビジネス実例紹介として「メガマンションにおけるコミュニティデザイン」についてレクチャーしている。コミュニティデザインについてはこのコラムでも何度も述べているが、ここであらためて紹介しておこう。

 住宅を生活の容器とするなら、その容器をデザインするのが建築設計の本来の仕事だろう。でも、いま、その容器の中身をもしっかりと建築設計の視野に入れて住宅をデザインすべき時にある。その容器の中身とは、日々の生活における家族、お隣さん、地域住民といった人と人との関係、つまりコミュニティのありようそのものである。

 地域コミュニティが崩壊したといわれて久しい。そして、家族の少人数化、高齢化はどんどん進んでいて、「家族」というより「孤族」と呼んだほうがいいくらいだ。それが原因で、悲しい事件がたくさん起きている。現代社会は、住宅という容器の中身もきちんとデザインしてほしいと、ディベロッパーや建築家に必死に要請しているように思えてならない。

 だから、建築デザインと共に、コミュニティ形成を促進する仕掛けをも一緒にデザインしよう。その試みを、僕は「コミュニティデザイン」と呼んでいる。

 最近、首都圏で、「メガマンション」と呼ばれる300戸から1000戸クラスの大規模マンションが数多く登場している。メガマンションは、建築というよりもはやひとつの街と言っていい。メガマンションの建設は、既存の街なかに、数千人が住まう全く新しい街が忽然(こつぜん)と出現するようなものだろう。それも見知らぬ人たちばかりだ。そこで、僕は、コミュニティをデザインするという発想でメガマンションの企画・設計に取り組んでいる。

 コミュニティデザインは、まずメガマンションが建つ街の地元住民へのグループインタビューからスタートする。そこで、地元住民に、自分たちが住まう街のすばらしさを徹底的に語ってもらい、その街に暮らす様々な「達人」や「有名店」をたくさん紹介してもらう。その成果として、その街の「人物図鑑」や「……ウォーカー」をつくる。

 それら冊子は、マンション販売のためのパンフレットの一部なのだけれど、その編集や制作も地元住民に参加協力してもらっている。その他にも、街の暮らしや文化を紹介するネットでの「ブログ」制作や「コミュニティ誌」の発行にもどんどん協力してもらう。販売センターがオープンすれば、「人物図鑑」に登場したアーティストに個展やイベントを開いてもらうのだが、その企画提案も地元住民にお願いしている。

 メガマンションでの暮らしが始まれば、見知らぬ者同士の暮らしのなかでの「……してほしい人」と「……してあげたい人」をつなぐ仕掛けを用意しておく。それを「マッチングシステム」と呼んでいて、この実践をやはり地元住民にお願いしている。これによって、様々なカルチャースクールやサークル活動がうまれていくことになり、その舞台となるのがメガマンションならではの充実した共用施設なのである。こうして見知らぬもの同士は、自然に顔見知りになり、コミュニティは形成されていく。

 メガマンションのコミュニティづくりに参画してもらう地元住民を「コミュニティサポーター」と呼んでいる。その多くは社会で実践可能なスキルを眠らせている主婦たちだ。そのコミュニティサポーターが、いま職能として確立しつつある。それは、新たなコミュニティビジネスの誕生と言ってもいいだろう。
2007年08月03日 asahi.com

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